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2025年12月9日
心臓血管外科手術後患者の早期の立位離床におけるリハビリ意欲の影響:単施設前向き観察研究の二次分析
下西 美和(東北大学医学部保健学科看護学専攻 学部生)
このたび、第22回日本循環器看護学会学術集会において、最優秀演題賞という栄誉ある賞を賜り、誠に光栄に存じます。審査委員の先生方には、貴重なご助言を賜りましたこと、そして本賞にご選考いただきましたことに心より御礼申し上げます。本研究は、ご指導くださいました先生方をはじめ、研究にご協力いただけた皆様のご支援の賜物であり、この場をお借りして深く感謝申し上げます。
私は学部3年次の急性期看護実習で血管外科手術を受ける患者さんを受け持ちました。その方にとって人生初の全身麻酔下での侵襲的手術で、術前から不安を口にしながらも、「退院後も今まで通りの生活を送りたい」という希望を持っていました。術後は、手術合併症を発症してしまい、術前と比べて著しくADLが低下し、ベッド上で動くことすら辛そうなご様子でした。しかし、症状改善とともに離床やリハビリが徐々に進むと、患者さんの表情に変化が現れ始めました。「昨日より長い距離を歩くことができた」という小さな成功体験が、患者さんの自信や前向きな気持ちに繋がり、リハビリ意欲が目に見えて高まっていく様子を目の当たりにしました。私はこの実習体験を通じ、術後の回復過程における意欲の重要性を強く実感しました。そして、このリハビリ意欲という患者さんの心理的要因が、術後の早期離床にどのように影響するのかを明らかにしたいと考えたことが、本研究の出発点となり、4年次の卒業研究で取り組みました。
文献検討の結果、早期離床を遅らせる要因として身体的・環境的・心理的側面があると報告されていましたが、患者自身のリハビリ意欲が早期離床に影響しているのかは十分に検討されていませんでした。臨床では、立位の早期離床は歩行リハビリへの第一歩であるため、立位離床と術前・座位時・立位時の各時点におけるリハビリ意欲について多変量ロジスティク回帰分析で評価しました。その結果、いずれの時点でもリハビリ意欲は、離床と有意な関連性を示しませんでした。これは、早期離床プログラムが既に体系的に実施されていたため、患者個々の意欲に左右されず立位達成が促進された可能性を示唆したと考えました。
私は初めて研究に取り組み、データから何を見るか、データをどのように扱うか、どう分析するかに対して非常に頭を悩ませました。結果の解釈で悩むことも多くありましたが、先生方の丁寧なご指導と多くの方々の助言をいただきながら、少しずつ理解を深めることができました。学部4年次に学会で口頭発表するという貴重な機会も得て、研究の過程そのものが自分の成長につながるかけがえのない経験となりました。今後は本研究を論文化し、得られた知見を積み重ねることで、看護の発展に貢献していきたいと思います。

